令和3年度 税制改正大綱 公表 その2
令和3年度 税制改正大綱について、手続き規定や電子帳簿保存法関係の見直し案について、ご紹介します。
電子帳簿保存法については、国税庁のホームページで、①電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係、②スキャナ保存関係、③電子取引関係に関する一問一答(Q&A)が公表されています。帳簿・書類・電子取引とそのアプローチの方法は別々に定められているので、混在しないように気を付けましょう。今回の税制改正で、電子帳簿で訂正・削除履歴が残らないシステムでの電子データ保存が認める方向となったのは、正直、驚きました。
(1)消費税の課税売上割合に準ずる割合を用いる場合の承認申請
たまたま土地の売却があり、課税売上割合が下がる場合などは、事前承認を受けることにより、平均の課税売上割合などの課税売上割合に準ずる割合を用いて、消費税の計算ができることになっているが、課税期間の末日までに申請し承認を受ける必要があった。
承認審査の時間的な余裕の確保のため、、課税期間の末日までに承認申請を提出し、同日の翌日以後1ヶ月以内に承認を受けた場合には、その課税期間から準ずる割合を用いて計算できるようにする。
(2)税務関係書類における押印義務の見直し(令和3年4月1日以後に提出する書類~)
次の書類を除き、提出者等の税務関係書類についての押印を要しないこととする。
・担保提供関係書類及び物納手続き関係書類のうち、実印での押印と印鑑証明書の添付を求めている書類
・相続税及び贈与税の特例における添付書類のうち財産の分割の協議に関する書類
(3)電子帳簿保存制度の見直し
▮ 承認制度の廃止
国税関係書類の電磁的記録等による保存制度について、承認制度を廃止する(令和4年1月1日~)。
▮ 電子データ保存の要件の緩和
自己が一貫して電子計算機を使用して作成する仕訳帳や総勘定元帳などの帳簿を電子データ(正規の簿記の原則に従って記録されるものに限る)のまま保存する場合の要件を緩和する(令和4年4月1日以後備付け開始の帳簿から)。
① 優良電子帳簿
訂正等の履歴が残り、帳簿間での相互関連性要件、検索要件のすべてを満たしているシステムを使用している場合は、届出制を前提として、修正申告・更正時の過少申告加算税の5%軽減を行う。
② 一般電子帳簿
システム概要書やディスプレイ・プリンタ等を備付け、税務調査時等、質問検査権に基づくデータのダウンロード要請に応じることができれば、電子データのまま保存することを当面可能とする。
▮ 青色申告特別控除
55万円控除…正規の簿記の原則に従い記録している者(貸借対照表等の添付)
65万円控除…上記に加え、電子帳簿保存または電子申告している者について適用されているが、この場合の電子帳簿保存は、優良電子帳簿保存に限るという見直しを行う。
10万円控除…上記以外の者
(4)スキャナ保存制度の見直し
▮ 承認制度の廃止
国税関係書類に係るスキャナ保存制度について、承認制度を廃止する(令和4年1月1日から)。
▮ タイムスタンプ要件の緩和
タイムスタンプ要件について、付与期間を3日以内から最長約2月以内にとし、受領者がスキャナで読み取る際に行う書類への自署を不要とする。訂正削除履歴が残り、訂正削除を行った事実や内容を確認できるシステム(訂正削除を行えないシステムを含む)で電子データを保存する場合は、タイムスタンプ要件は不要とする。
▮ 適正事務処理要件の廃止
相互牽制、定期的な検査及び再発防止策の社内規程整備等を廃止する。
▮ 検索要件の緩和
検索項目を取引等の年月日、取引金額及び取引先に限定する。
また、税務調査時等の質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードにおいて、範囲指定及び項目を組み合わせて設定できる機能の確保は不要とする。
▮ 不正行為を抑止する担保措置
要件を大幅に緩和する一方で、電子データに関連して改ざん等の不正が把握されたときは、重加算税を10%加重する。
(5)電子取引(取引情報の授受を電磁的方式により行う取引)の保存制度の見直し
▮ タイムスタンプ要件の緩和
タイムスタンプ要件について、付与期間を遅滞なくから最長約2月以内にとし、受領者がスキャナで読み取る際に行う書類への自署を不要とする。
▮ 検索要件の緩和
検索項目を取引等の年月日、取引金額及び取引先に限定する。
また、税務調査時等の質問検査権に基づく求めに応じて、電磁的記録のダウンロードにおいて、範囲指定及び項目を組み合わせて設定できる機能の確保は不要とし、更に、
判定期間における売上高が1,000万円以下である保存義務者の場合は、検索要件のすべてを不要とする。
▮ 不正行為を抑止する担保措置
要件を大幅に緩和する一方で、電磁的記録に記録された事項に関連して改ざん等の不正が把握されたときは、重加算税を10%加重する。