4.帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められるケース
■ インボイス保存免除取引
請求書等の交付を受けることが困難であるなどの理由により、次の取引について、一定事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。帳簿のみの保存で仕入税額控除の適用を受ける場合、帳簿には、通常必要な記載事項に加え、いずれかの仕入れに該当する旨(「公共交通機関特例」など)等の記載が必要です。また、自動販売機特例や回収入場券特例については、相手方の所在地を帳簿に記載することとされています(「〇〇市自販機」、「〇〇銀行△△支店ATM」など)。
(1)売手のインボイス交付義務が免除されているもの
①「公共交通機関特例」
1回の取引金額が3万円未満の公共交通機関による旅客の運送
②「自動販売機特例」
3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等(ATMは該当、駐車場精算機は非該当)
③「郵便切手特例」
切手等を貼って、郵便ポストに投函される場合の郵便・貨物サービス
(2)棚卸資産として、インボイス発行事業者以外の者からの仕入れがあるもの
※相手方がインボイス発行事業者の場合は、インボイスの交付を受ける必要があります。
④「古物商特例」
古物営業を営む者のインボイス発行事業者でない者からの古物(古物営業を営む者の棚卸資産に該当するものに限る)の購入(例えば、中古自動車販売業)
⑤「質物特例」
質屋を営む者のインボイス発行事業者でない者からの質物(質屋を営む者の棚卸資産に該当するものに限る)の購入
⑥「宅地建物特例」
宅建業を営む者のインボイス発行事業者でない者からの建物(宅建業を営む者の棚卸資産に該当するものに限る)の購入
⑦「再生資源特例」
インボイス発行事業者でない者からの再生資源及び再生部品(購入者の棚卸資産に該当するものに限る)の購入(例えば、古紙販売業、廃棄物処理業など)」
※「インボイス発行事業者でない事業者」から購入する場合は、相手方の住所または 所在地を、帳簿に記載します。
(3)簡易インボイスが回収されるもの
⑧「回収入場券特例」
インボイスの記載事項が記載されている入場券等が、使用の際、回収される取引
(4)従業員精算
⑨「出張旅費特例」
従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)。法人カードで引き落としているものや、会社が直接支払うものは、この特例の適用対象ではありませんので、インボイスの保存が必要です。
■ 仕訳入力時の注意点
上記の場合は、取引の相手方が免税事業者であっても、仕入税額控除が受けられますので、課税区分の入力には、ご注意ください。
また、特例を受けるには、帳簿に「〇〇特例」など、いずれかの仕入れに該当する旨を記載することになっています。このような取引が頻繁に出てくる事業者は、勘定科目や補助科目の設定や摘要登録などにより、帳簿の記載要件をスムーズに満たせるようにしておきましょう。
上記④~⑥の古物等については、古物営業法等により、古物台帳に相手方の氏名および住所を記載することとされているものは、その住所等を帳簿に記載するかわりに、古物台帳の保存で対応できます(古物台帳への記載が省略される場合は、帳簿への住所等の記載も省略可能)。
相手方がインボイス発行事業者であるか否かを確認できるように、買取りの際に記入してもらう書類等に、インボイス発行事業者か否かをチェックする欄を設けるのもよいでしょう。